大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(う)1054号 判決

被告人 井上之弘

〔抄 録〕

そこで、量刑不当の控訴趣意に対する判断に先立ち、職権をもって調査すると、原判決掲記のように被告人が昭和四〇年二月二七日に東京簡易裁判所で窃盗罪により懲役六月に処せられ昭和四一年四月一八日に右刑の執行を受け終ったことは証拠上明らかである。ところで、原判決が確定判示した第二の事実関係のもとにおいて、原判示の新潟県公安委員会作成名義の自動車運転免許証すなわち有印公文書の偽造と右偽造公文書行使とは、罪質上、通常手段・結果の関係にあり、両者は刑法五四条一項後段所定の牽連犯であるから、科刑上は一罪として考察すべきところ、被告人は前記刑の執行を受け終ったのち五年以内である昭和四五年一一月初旬右公文書偽造の罪を犯したものであるから、その実行に着手した時点において牽連犯全体についても実行の着手があったものというべきである。そうすると、右の牽連犯は前記前科との関係で再犯となるから、同法五四条一項後段・一〇条により一罪として犯情の重い偽造公文書行使罪の刑で処断すべきところ、右刑について同法五六条一項・五七条により再犯加重をすべき筋合である。しかるに、原判決は、原判示第一の遺失物横領罪は右前科との関係で再犯になるとして右第一の罪につき所定刑中懲役刑を選択したうえ右懲役刑に再犯加重をしたにとどまり、右牽連犯と前記前科との再犯関係についてはその摘示を欠き、右偽造公文書行使罪の刑に再犯加重をしていないから、結局原判決には累犯規定の適用を遺脱し法令の適用を誤ったかしがあり、その誤りは本件において判決に影響を及ぼすことが明らかである。したがって、原判決はこの点において破棄を免れない。

(吉田 大平 粕谷)

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